巡拝をするにあたっての心構え

「弘法大師のご加護を信じ何事も修行と心得る」
遍路とは、弘法大師の修行の足跡をたどって歩くこと。
歩くから「修行」になる。
車やバスなどで巡拝する場合も、基本は「歩く旅」「修行の旅」であることを肝に銘じておきたい。
そうすれば、巡拝者としての行動は自ずと見えてくるだろう。

巡拝の心構えの中で特に重要なのが「十善戒」と「三信条」。
十善戒は弘法大師のお言葉で、諸戒の基本となるもの。
また、八十八ヶ所巡拝の道中、各地で人の情けにふれながら歩いていると、次第に三信条の境地になるといわれている。

お遍路さんの姿に遠くから両手を合わせて拝む土地の人も多い。
四国八十八ヶ所巡拝は、行う本人はもちろん、見守る土地の人にとっても、「同行二人」の実践なのである。

「十善戒」
一、不殺生(ふせっしょう) 殺生することなかれ
二、不偸盗(ふちゅうとう) 盗むことなかれ
三、不邪淫(ふじゃいん) 邪淫することなかれ
四、不妄語(ふもうご) 偽りを言うことなかれ
五、不綺語(ふきご) 虚飾の言葉を言うことなかれ
六、不悪口(ふあくく) 悪口を言うことなかれ
七、不両舌(ふりょうぜつ) 二枚舌を使うことなかれ
八、不慳貪(ふけんどん) 貪ることなかれ
九、不瞋恚(ふしんに) 怒ることなかれ
十、不邪見(ふじゃけん) よこしまな考えを起こすことなかれ

「三信条」
一、 摂取不捨のご誓願を信じ、同行二人の信仰に励む
弘法大師は我々を決して見捨てないということを信じ、信仰すること。
「同行二人」については他の巡拝者も同様であるから、出会ったら互いに合掌しあうのがマナーである。

一、 何事も修行と心得て、愚痴、妄語を慎む
巡拝中に起こった嫌なこと、アクシデントは自らに与えられた試練・修行だと思って心を安らかにし、愚痴や虚言をいわないこと。

一、 現世利益の霊験を信じ、八十八使の煩悩を消滅させる
現世利益とは、金儲けや出世など世俗的な欲望を満たすことではなく、この世で受ける「仏の恵み」のことである。仏の恵みがあることを信じ、札所を巡拝することで88の煩悩を1つずつ消し去っていこうという意味。